寝不足に悩んでいる方や、寝つきが悪くてなかなか眠れないという方は多いのではないでしょうか。このコラムでは、不眠の主な原因から、睡眠導入剤と睡眠薬の違い、副作用や依存のリスクまでを丁寧に解説しています。自分に合った薬の選び方や服用方法を知ることで、より良い睡眠に近づくためのヒントを見つけてみましょう。
不眠・睡眠不足の原因
- 不眠や睡眠不足になるのはなぜですか?
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睡眠は、私たちの体や心の健康を保つために重要な時間ですが、現代社会ではそのリズムが崩れてしまうことが珍しくありません。不眠や睡眠不足が起こるのは、次のような要因が考えられます。
不眠や睡眠不足の原因
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ストレスや悩みごと日常生活で感じるストレスや悩みごとは、脳を興奮させてしまい、不眠や睡眠不足の原因になります。
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生活習慣の乱れ寝る直前のスマホ・PCや、遅い時間のカフェイン・アルコールは脳を刺激し眠りを妨げます。また、就寝・起床時間が不規則だと体内時計が乱れ、自然に眠れなくなることがあります。
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環境の問題寝室が暑すぎる、寒すぎる、明るすぎる、静かすぎる、うるさすぎるなどの環境も、不眠の原因となります。快適で安心できる環境を整えて眠ることが大切です。
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体の不調や病気身体的な痛みやアレルギー、頻尿などの症状は、睡眠を妨げる原因となります。また、うつ病や不安症といった心理的な疾患も、不眠の直接的な要因になる場合があります。
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加齢による変化年齢を重ねると睡眠に関係するホルモンの分泌量が減少し、睡眠の質が低下したり、浅い眠りが増えたりすることがあります。
また、不眠が続くと体や心に負担が生じて、日中の活動に影響が出ることもあります。もし原因がわからないまま困っている方は、一度病院で医師や薬剤師に相談してみるとよいでしょう。
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睡眠導入剤と睡眠薬・市販薬(睡眠改善薬)のちがい
- 睡眠導入剤とは?睡眠薬とどう違うのですか?
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睡眠導入剤は、主に「寝つきが悪い」といった悩みに対して処方される薬です。たとえば、布団に入ってもなかなか眠れない、眠いのに頭が冴えてしまうといった状態に効果があり、短時間で作用するのが特徴です。そのため、朝まで成分が残りにくく、日中の眠気が起こりにくいように設計されています。
一方、睡眠薬は「寝続けられない」「途中で何度も目が覚める」「夜中に起きると再び寝付けない」といった悩みを改善する薬です。睡眠を深くする働きがあり、種類によって効き目の長さが異なります。「ぐっすり眠りたい」「朝まで寝続けたい」といった希望に合わせて、医師が適切な薬を処方します。
まとめると、睡眠導入剤は「寝つき」を改善し、睡眠薬は「眠りの持続」や「深さ」もサポートする薬です。ただし、この区別は厳密ではなく、実際には睡眠導入剤も広い意味で睡眠薬の一種と考えられることがあります。
- 市販薬(睡眠改善薬)と処方薬(睡眠導入剤)にはどのような違いがありますか?
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市販の睡眠改善薬と医師が処方する睡眠導入剤には、成分や効果、使い方などに違いがあります。大きく分けると、「手軽に購入できる市販薬(睡眠改善薬)」と「医師から処方される医療用薬(睡眠導入剤)」の2種類です。
市販の睡眠改善薬はドラッグストアや薬局などで手軽に購入できるもので、比較的軽い「寝つきが悪い」などの、一時的な不眠の改善を目的に使用されます。主な成分としては、眠気を促す働きがある抗ヒスタミン剤が使われているのが一般的です。 効果は穏やかで、生活習慣の見直しとあわせて使用することで、軽度の不眠や一時的な眠りの不安定さをサポートします。ただし、抗ヒスタミン剤の特性によって翌朝にだるさや眠気が残る場合があるため、服用には注意が必要です。
一方、病院で処方される医療用の睡眠導入剤は、不眠の原因や症状に応じて処方される薬です。中〜重度の不眠に対して使われることが多く、病歴や体調を踏まえて適切な種類や量が調整されます。処方薬には、脳や神経に働きかけて眠りを促す成分が含まれています。代表的な「ベンゾジアゼピン系」や「非ベンゾジアゼピン系」は、睡眠の質や時間の改善に役立ちます。
睡眠導入剤を服用する際の注意点
- 睡眠導入剤に副作用はありますか?他の薬やアルコールと一緒に服用しても問題ありませんか?
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正しく使用していても体質や状況により副作用が出ることがあります。とくに使い方を誤るとリスクが高まります。
主な副作用
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日中の眠気や倦怠感睡眠導入剤の服用後、翌朝までその効果が残っていると、頭が重く感じたり、ぼんやりしたりすることがあります。とくに夜遅く薬を服用した場合、朝まで影響を及ぼしやすいので注意が必要です。
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ふらつきやめまい一時的にバランス感覚が低下することがあります。とくに高齢者の場合、転倒して怪我をする危険性があるため、慎重に使用することが大切です。
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記憶障害(一過性健忘)稀に、薬を服用した後の出来事や話した内容を覚えていない「健忘症状」がみられることがあります。服用後は安全に過ごせる環境を整え、無理な作業や運転は避けましょう。
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依存性や耐性一部の睡眠導入剤は長期にわたって服用すると、薬への依存性が生じたり効き目が弱まる「耐性」がつくことがあります。医師や薬剤師と相談して、適切な服用期間を守りましょう。
また、睡眠導入剤は他の薬の作用を強めたり、効果を妨げたりする場合があります。特に注意が必要なのは以下の薬です。
併用に注意が必要な薬
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抗不安薬や抗うつ薬抗不安薬や抗うつ薬なども、脳に作用する薬のため、併用すると眠気やふらつきが強くなることがあります。
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鎮痛剤や解熱剤(特に麻薬系のもの)睡眠導入剤と併せて使うと、呼吸抑制や過度な中枢抑制のリスクを高めるので、医師の許可なしには使わないでください。
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抗アレルギー薬眠くなる成分が含まれている場合があるため、併用する際には医師や薬剤師に相談してください。
併用する薬の種類や飲み合わせなどによってもその影響は異なるため、すでに他の薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に確認しましょう。
また、睡眠導入剤を使用している間は、飲酒も控えましょう。睡眠導入剤もアルコールも肝臓で分解されるため、同時に摂取すると肝臓に大きな負担がかかり、肝機能が悪化するおそれがあります。
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- 睡眠導入剤を服用するタイミングは?寝る直前でもよいですか?
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多くの睡眠導入剤は、布団やベッドに入る直前に服用するよう指示されています。これは、睡眠導入剤が「寝つきを良くする」ことを目的とした薬だからです。眠気を感じたらそのまま眠ることで、薬の効果を十分に引き出すことができます。 一方で、服用後に長く起きていると、効果が弱まったり、強い眠気による事故につながるおそれがあります。服用したら無理をせず、すぐに休むようにしましょう。
一部の睡眠導入剤、たとえば中時間型や長時間型の睡眠薬などは、服用後しばらく時間が経って効果があらわれることがあります。これらは中途覚醒や早朝覚醒に対応できるタイプで、効果のあらわれ方や持続時間が短時間型とは異なります。そのため、服用するタイミングは医師の指示に従いましょう。
睡眠導入剤は、服用のタイミングを正しく守らないと薬の効果が十分に発揮されず、眠りの改善が得られなかったり、服用が遅れることで翌朝まで眠気が残ってしまう場合があります。さらに、服用後に眠らずに行動を続けると、転倒事故や記憶障害といった深刻な副作用が生じるリスクもあるので注意が必要です。
- 依存が心配です。睡眠導入剤を毎日服用しても大丈夫でしょうか?
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症状に合わせて睡眠導入剤を毎日使用することは問題ありませんが、いくつか注意が必要です。特に長期間の服用や自己判断で使用し続けることは、次のようなリスクを伴います。
睡眠導入剤を長期間服用するリスク
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依存性一部の睡眠導入剤(特にベンゾジアゼピン系やその類似薬)は、長期間の使用によって依存が生じることがあります。薬がないと眠れないと感じる「精神依存」や、不眠や不安、イライラなどがあらわれる「身体依存」などです。こうしたリスクを防ぐためにも、自己判断で服用を続けたり中止したりせず、必ず医師の指示に従って使用しましょう。
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耐性睡眠導入剤を長期間使うと、次第に体が薬に慣れてしまい、効果が薄くなることがあります。その結果、同じ効果を得るために服用量を増やしてしまい、さらなるリスクを招きます。
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長期的な副作用睡眠導入剤を長期間使用すると、集中力や判断力が低下したり、倦怠感や日中の強い眠気を感じることがあります。特に高齢の方ではふらつきや転倒などの事故につながるおそれもあるため、注意が必要です。
毎日睡眠導入剤を使用する場合は、依存を防ぐための工夫が大切です。 まず、必ず医師の指導に従って使用することが基本。自己判断で薬の量を増やしたり、使用期間を延ばしたりするのは危険です。服用頻度や期間については、定期的に医師と相談しながら見直すようにしましょう。
また、睡眠導入剤はあくまで一時的な不眠の緩和を目的とする薬であり、根本的な不眠の治療薬ではありません。薬に頼りすぎず、生活習慣や環境の改善にも取り組みながら、段階的に薬への依存を減らしていくことが大切です。
依存や耐性が心配な場合、医師の指導のもとで少しずつ薬の量を減らす「減薬」の計画を立てることも有効です。薬に頼らず眠れる健康的な生活習慣を意識しましょう。就寝前にリラックスできる時間をつくる(深呼吸・ストレッチ・軽い瞑想など)、毎日同じ時間に寝起きする、カフェインやアルコールを控える、日中に適度な運動を行う ―― こうした小さな工夫の積み重ねが、安定した睡眠につながります。
薬に頼らず不眠を改善する方法を、医師と相談しながら検討することも大切です。薬を使わない治療法には、行動療法やサプリメントの活用、ストレスケアなどがあります。 中でも、認知行動療法(CBT-I)は、不眠症治療において科学的に有効性が認められている方法です。睡眠に対する考え方や習慣を見直し、眠りを妨げる要因を減らすことで改善を図ります。たとえば、明るすぎる照明や騒音、室温など、物理的な環境を整えるといった具合です。 また、睡眠サプリメントを取り入れることで、不眠症状がやわらぐこともあります。ただし、体質や他の薬との相性によっては合わないこともあるため、使用前に専門家へ相談するようにしましょう。 不眠の原因がストレスや心理的な問題にある場合、カウンセリングやストレス軽減の工夫によって薬に頼らず改善できる可能性があります。こちらも一度専門家への相談をおすすめします。
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