
くしゃみ、鼻水・鼻づまり、皮膚や目のかゆみなどつらい症状を伴うアレルギー疾患。その治療法のひとつが、原因物質(アレルゲン)を少しずつ投与することで体を慣れさせ、症状の緩和や体質改善が期待できる「舌下免疫療法」です。クリニックでの検査や治療の流れなど、内田哲郎先生に詳しくうかがいました。

内田 哲郎 先生
新浦安セントラル耳鼻咽喉科・アレルギー科 ・院長
富山大学医学部卒業。千葉大学附属病院および同大学関連病院を経て、2018年より「鼻のクリニック東京」に4年間勤務。2022年、「新浦安セントラル耳鼻咽喉科・アレルギー科」開業。耳鼻咽喉科学会認定専門医、千葉大学医学部医学博士。
舌下免疫療法とは何ですか。ほかの治療法との違いも教えてください。
アレルギー治療には、つらい症状を薬で和らげたり抑えたりする「薬物療法(対症療法)」と、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ投与することで体を慣れさせ、アレルギーを起こしにくくする「免疫療法」があります。
免疫療法では、アレルゲンを含む治療薬を注射する「皮下免疫療法」が広く行われてきましたが、注射が苦手な方や小さなお子さんには難しいという面があります。
一方、「舌下免疫療法」は、1日1回、舌下(舌の裏)に薬を置いて1〜2分待ち、唾液で溶けた薬剤をそのまま飲み込むという比較的手軽な方法です。注射による免疫療法と比べて重篤な副作用が少なく、通院頻度や費用面の負担が少ないのもメリットです。
希望すれば誰でも治療を受けられますか。
舌下免疫療法を受けられるのは「スギ花粉症」、または「ダニアレルギー」のクラス3以上と診断された方が対象です。アレルギー疾患の原因物質は花粉、動植物、カビなどさまざまで、何に対してアレルギーを起こすかは人によって異なるため、医療機関で検査を受ける必要があります。
クリニックでの検査や舌下免疫療法の流れを教えてください。
問診や視診を行った後、血液検査を行います。当院では指先採血によるアレルギー検査を導入しています。注射器を使わず指先からごく少量の血液を採るだけで41種類のアレルゲンが判定できるもので、30分程度で結果が出ます。
ただし、検査でスギ花粉症やダニアレルギーが確認された場合も、当院ではまずアレルギーの薬物療法(飲み薬や点鼻薬)など一般的な治療を行います。そのうえで症状が改善されない方や、眠気などの副作用で飲み薬が続けられない方などに対して舌下免疫療法を提案しています。
すぐに舌下免疫療法を行わないのはなぜですか。
舌下免疫療法は小さなお子さん(6歳以上推奨)でも受けられることや、スギ花粉・ダニの両方を同時に治療できるメリットがある一方、2~5年(最低3年間)と長い時間をかけて継続的に行う治療法です。半年~1年ほどで症状が改善する方もいますが、2年間治療を続けても残念ながら3割ほどの方には効果が出ません。今のところ、治療の前に効果が出る・出ないを見分ける方法も見つかっていないため、従来の対症療法の効果をみたあと、舌下免疫療法の効果が得られない可能性があることを理解いただいたうえで導入する必要があるからです。
治療にあたっての注意点はありますか。
ダニアレルギーの場合は季節を問わずいつでも始められますが、スギ花粉症はスギ花粉が飛散している時期に治療を始めると副作用が強く出るため、1~5月頃は治療を始めることができないので注意が必要です。また、「薬を一時的にやめても大丈夫ですか」という質問をよく受けますが、たとえば歯を抜いたり、口内に炎症があって数日間薬を服用しない程度であれば問題はありません。大切なのは、じっくり腰を据えて治療に取り組むことです。
くしゃみや鼻水・鼻づまりでお困りの方のなかには、「慣れているから」「スギ花粉の時期だけだから」とやり過ごしている方も少なくありません。しかし鼻粘膜は寝ている間に腫れが強まる傾向があり、睡眠中に鼻づまりを起こすと口呼吸になりやすいという問題も生じます。睡眠の質を高めるためにも我慢は禁物。早めの受診・治療をおすすめします。また、舌下免疫療法について詳しく知りたい方、導入を検討している方は、舌下免疫療法を行っているクリニックを受診して、医師に相談するといいでしょう。
新浦安セントラル耳鼻咽喉科
[診療科目]
耳鼻咽喉科、アレルギー科
[診療時間]
10:00~13:00、15:00〜19:00
(土・日・祝の午後は14:30〜18:30)
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[休診日]
火曜・金曜
※火・金が祝日の場合は休診
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